好きなホルン奏者

 バリー・タックウェル 中学時代にFMで初めて聴いたベートーヴェンのソナタは今でも鮮烈な印象を与える。(伴奏はアシュケナージ。)柔らかく美しいホルンも良いが、ダイナミックさを兼ね備えている点ではタックウェルが一番かもしれない。ホルン奏者として抜きん出た存在であることは確かだろう。彼が気に入ったというELKホルンの動向も気になる。 

 デール・クレヴェンジャー ベルリン・フィルが演奏し、DVD化されたシューマンの「4つのホルンのためのコンチェルトシュトゥック」でゲストとしてソリスト4人の中で第2ホルンを吹いている。実際には、まだ若いベルリン・フィル首席シュテファン・ドールが吹く1番ホルンの楽譜の半分くらいを代わる代わる演奏している。かなりの年齢だと思うが、安定した演奏からは全く衰えを感じさせない。野太く説得力のある音色にもまた魅力がある。合理的な奏法に説得力をもつ、アメリカン・ホルンの雄であろう。日本人だけでなく彼に師事して大成した奏者は多い。かつてゲオルク・ショルティが指揮したシカゴ交響楽団の言わずと知れた首席ホルン奏者である。

 ラドヴァン・ヴラトコヴィチ 2009年、金沢で室内楽と協奏曲の実演を目の当たりにした。安定したテクニックと常にたっぷりとした息づかいと表現が好ましい。彼の音を聴いていると、太ベルではないパックスマンM20を所有したくなる。(笑)それだけ良い音。木管五重奏団のル・ヴァン・フランセのメンバーとして、ほぼ毎年来日している。このアンサンブルでも実演を聴いてみたいものだ。

  ラデク・バボラーク チェコ・フィル、バンベルク響、ミュンヘン・フィル等を経てベルリン・フィルハーモニー管弦楽団首席奏者にまでなったが、2009年末?オケを辞してソリストとなった。まだ若いのに、この人はすごい!バッハの無伴奏チェロ組曲をホルンで録音している(私は大変感動し、楽譜を購入したくらいだが、この演奏には何故か賛否両論があるようだ。かの「コントラバスの歌い手」ゲリー・カーも立派なアルバムを録音しているし、テナー・サックスの演奏もある。このように、チェロ以外の楽器での演奏はどれも評価されているのに!)。
 オーケストラ・アンサンブル金沢の定期にもかつてソリストとして登場し、粋なモーツァルトを聴かせてくれた(特に第1番が秀演だった)。間近でアンブシュアを見ると、in Fの譜面で言うと第4線の実音Gあたりで、高音用アンブシュアに変化しているようだった。しかし、この変化はサウンドには感じられない(当然か)。鼻から唇の両横へのラインがとても発達していて、上唇のいい意味でのテンションを感じさせた。「ベルリン・フィル8人のホルン奏者たち」などでたびたび来日している。2010年3月、富山県・入善コスモホールでの小菅 優(Pf.)とデュオ・リサイタルを聴いたが、特にF.シュトラウス「ノクターン」のテンポ設定と歌の深みには驚いた。2010年8月には、これを含むCDが出た。録音は3月末から4月初めに埼玉県内で行われたようだ。

 ペーター・ダム  音色・歌い方の1つの理想形。1985年にドレスデン国立歌劇場管弦楽団のソロ・ホルン奏者として来富、ブラームス/交響曲第1番を演奏。1987年来日時、大阪など室内楽公演(ベートーベン:ホルン・ソナタ、ブラームス:ホルン三重奏曲、シューマン「アダージョとアレグロ」、シューベルト「流れの上で」、および協奏曲を演奏(ウェーバー「小協奏曲」)。特に、室内楽公演では、後光が差すような音の回り込みを体験し、仰天した。

 ヘルマン・バウマン ホルン・ソロ演奏の先駆者!京都市交響楽団をバックに、グリエール/協奏曲の演奏を聴いた( 京響第323回定期演奏会1990年4月16日月曜日)。アンコールでは、バウマンの独奏でロッシーニ/バウマン編「狩りのランデヴー」を演奏。この時の使用楽器はパックスマン社のセミ・トリプル(洋白)で、大きく肩も使った深いブレスによる、豊かな音で演奏していた。脳出血からのカムバック後、山形で開催された世界ホルン・フェスティバルでのR.シュトラウス/ホルン協奏曲第1番の演奏は、かつての姿からは考えられないくらい傷だらけであるものの、彼の全盛期を知るものにとって、涙なしでは聴くことができないものであった(暗譜がすべて頭から消えてしまい、リハビリを兼ねて曲を覚え直したそうだ)。

 ウォルフガング・ガーク   元・京都市交響楽団副首席の小山 亮先生曰く、”パワー・ホルン”的な演奏家。強力なスタミナの持ち主として有名らしい。あの「ジャーマン・ブラス」でも大活躍。バンベルク交響楽団を経て、シュトゥットガルト放送響、ミュンヘン・フィル(私は1985年福井・1990年東京公演を聴いた。)で故チェリビダッケ氏の厚遇を受けて演奏してきたキャリアはすごい。
 ドイツ木管ゾリステンにも参加していた(高岡でも公演があり、演奏後の楽屋にお邪魔した。ミュンヘン・フィル福井公演のことを覚えていてくれた。ドイツ木管ゾリステンメンバーは皆気さくで、互いに Auf Wiedersehen! を言って別れたものだった。しかしオーボエのマンフレート・クレメント氏は、数年前他界され、今はもう再び会うことはできない)。
 また、NHK−TVでも放映された「故オイゲン・ヨッフム&バンベルク響来日公演」の「ブルックナー/交響曲8番」では日本人奏者・水野氏とともに演奏している姿が見られた。

 

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