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初心者〜中級者に薦めるマウスピースの例

「マウスピース選びは、靴選びと同じ。」合わないものを無理に使っていると、健康を害するという面も。
経験上、以下のマウスピースで適合するものに出会うことが多い。ティルツには他のシリーズもあり、リム形状などが異なる。特記のないものには、ヨーロピアン・シャンク(3/100)、アメリカン・シャンク(5/100)の両方がある。

一昔前には、「よく息が入る」と言われてスロート・ボアが4.5mmを大きく超えたり、リム内径も18mmを超えるようなものがもてはやされたこともあった。しかし、「柔らかく、かつ閉じた唇の状態」でアンブシュアが作れるのなら、巨大なものは不要だと考える。特にリムが巨大なものでは、きちんとした指導を受けていない限り、ハイトーンで唇を横に引いてしまうなどの悪い癖がつく場合が多いようだ。

念のため書くが、初心者など経験の浅い人は、信頼できる人に音の違いをよく聴いてもらいながら、吹きやすいものを選ぶとよい。なお、必ず、自分が使っている楽器を用いてマウスピースを選ぶこと。楽器のタイプによって、相性の良いマウスピースとそうでないものがあるためだ。

ティルツ・シュミットモデルやマクウィリアムモデルのリムはやや平らで少し幅が広い。JKのものはこれらよりも丸みがある。リム形状についても、その人により合う・合わないがある。

【マウスピース試奏のポイント】
1 リム形状が合うかどうか(平べったい・丸い、バイト:内側の丸み、リム外側の形状)
2 音色や響きが自分の出したい音に近いかどうか
3 どれくらいの音量・音域をカバーできるか
4 跳躍、スラーやタンギングがしやすいかどうか

【カップの深さ】
カップが浅いと、高音域は出やすいが、浅過ぎるものだと響きが薄っぺらくなる。深いと低音域は出やすいが、深過ぎるものだと響きが暗めになる。
また、楽器のタイプによって、適・不適が生じる。
○細ベル・中細ベル(いわゆる「K巻き」・「ガイヤータイプ」と呼ばれる楽器に多い)→深過ぎると、明るく張りのある音色・響きからは遠ざかる。中庸のUカップが向く。
○太ベル・極太ベル(いわゆる「クルスペ巻き」と呼ばれる楽器に多い)→浅めのものでは、楽器本来の深い響きを得にくい。よって、深めのVカップが向く。
また、楽器の側にも「太ベルのK巻き」や、アレキサンダー103のような「細ベルのクルスペ(に近い)巻き」も存在している。最近のマウスピースには、V・Uの形状が複合した「ダブルカップ」が多く、多様な楽器に対応しやすいだろう。

【スロート・ボアの太さ】
マウスピースの中で、もっとも口径が細くなる部分。太めだと息が多く入るので心地良い吹奏感が得られるが、当然息の消費が多くなる。細めだと息はあまり多く入らないが、高音域を吹くため高い息の圧力が必要な場合などに向く。使用する楽器のタイプや演奏する場面によって異なるが、通常使用するものなら、3.8〜4.5mm前後のものになるだろう。

メーカー シリーズ 型番 内径・ボア・カップ深さ・リム厚 など(mm) 特徴
ティルツ オリジナルモデル S8 17.5 スロート・ボア3.8 MD 中庸で癖がない。比較的明るめの音。
S9 17.5 スロート・ボア4.0 MD S8より浅い。息が細いなどのためS8が合わない場合に適合することがある。
58 17.0 スロート・ボア3.9 MD  アレキサンダー8とほぼ同じ。
58F 17.0 スロート・ボア3.8 MD アレキサンダー8Fとほぼ同じ。

シュミットモデル
・アメリカンシャンクなし

85 17.5 スロート・ボア4.3 MD 豊かな音。
17.5 スロート・ボア4.1 MS 85より浅い。
17.5 スロート・ボア3.7 VS 8より浅い。ホルンらしいサウンドを保ちながらも、高音域が出しやすい。中・低音域には向かない。
マクウィリアム
・リムはやや平たい。
・リム内径がやや大きめの「W」もある。
17.5 スロート・ボア4.4 MD このシリーズ最初の型。深めのため低音用とうたわれているが、中・高音域も豊かに鳴らせる。
17.5 スロート・ボア4.2 MS 1と3の中間。ただしもっと豊かな響きが必要なら、1を薦める。
17.5 スロート・ボア4.0 S どちらかというと、高音志向。ただし低音が出せないわけでもない。
JK W2
・リムはやや丸い。
W2CM 17.5 スロート・ボア4.4 MD やや深め。豊かな音。
W2DM 17.5 スロート・ボア4.2 M 中庸。豊かで明るい音。
W2E/DM4.2 17.5 スロート・ボア4.2 MS 以前のシュテファン・ドール(ベルリン・フィル首席)モデル。W2DMより浅いがスロート・ボアが拡大され、息が入る。カップ容積はW2DMとW2EMの中間。
ヤマハ Shiro Ide Model HR−IDE
HR−IDE2

HR−34C
T      17.43 スロート・ボア4.09
U・34C  17.81 スロート・ボア4.09
井手詩朗(新日本フィル首席)モデル。メリハリと豊かさが両立する。
※HR−34Cは、HR−869付属モデルだが、別売もされる。TABATAがメイン使用中。
TAD <リム>※リム幅:狭い→広い
【Bタイプリム】 17.00mm BMN、B、BMW
【Cタイプリム】 17.25mm CMN、C、CMW
【Dタイプリム】 17.50mm DMN、D、DMW

<カップ>※中V→中VU→深V→ ( )内:ボア径
【Bリム用】 B5(4.3)、B6(4.3)、B7(4.5)  
【Cリム用】 C5(4.3)、C6(4.3)、C7(4.5)
【Dリム用】 D5(4.0)、D6(4.3)、D7(4.5)

・Aシャンク:アレキサンダー、ヤマハ、キューン等用
・Bシャンク:パックスマン、シュミット、ホルトン等用

リムとカップを選択し、スクリューで組み合わせることで、「奏者にも」「楽器にも」合うマウスピースが作れると思う。リムは数値よりも大きめに感じられるかもしれない。やや重量があるので、他社製の同サイズよりも豊かに響く要素がある程度ある。経験上、ヤマハの楽器に組み合わせると好感触であった。
実際に選ぶ際は、中庸のカップを用いて「リムのタイプを先に選択」、その後「そのリムを基準にカップを選ぶ」とよい。

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